この記事を読んで欲しい人 | ビル | 設計 | 注意点
この記事は、
- ビルを設計するぞー!
- 完成後のメンテナンスにお金と手間のかからないビルにしたい!
- 建築物の設計者を目指したい!
上記の方向けに書いていきます。
もくじ | ビル | 設計 | 注意点
- 各階に設備バルコニー
- 屋上の防水と設備架台を分離
- 搬入導線と利用者導線を分離
- 清掃しやすい仕様
- サインはデジタルサイネージ
- 間仕切り、用途は自由に
- 設備改修しやすい配置
- スケルトン・インフィル
- 終わりに
今回は10階建て前後のオフィスビルを想定しています。建物の規模や用途により参考になる点や、反対に参考にならない点もあるかもしれませんが、参考になれば嬉しいです。
各階に設備バルコニー | ビル | 設計 | 注意点
オフィスビルの空き区画に新しく入居企業さんを誘致する場合、
『サーバーを設置するので空調機を増設したい。室外機はどこにおけば良いか』
などという質問を受けることがあります。
一般的なビルは屋上にしかスペースがないので、屋上への設置をお願いしておりますが、
- 屋上まで上げるための工事費が高い
- 各階の共用部を上げていかないといけない
- 屋上のスペースも限りがある
- テナントの設備を他の作業時に触ってしまう恐れも
などのデメリットがあります。
理想は、各階に設備設置用のスペースがあるとテナントのそういった要望に応えることも良好な管理をしていくことも可能になると思います。
2階のテナントさんから、空調を増設したいと言われた時は、屋上までの配管・コア抜き概算費用を見てびっくりしました。
室外機と室内機の距離が長いとロスもありますし。
屋上の防水と設備架台を分離 | ビル | 設計 | 注意点
先ほどの増設設備の設置環境とも関連がありますが、屋上の床面に設備を直接置いているビルが多いです。
屋上は雨がかかりますので定期的に防水工事をする必要があります。ただ、室外機などが床に直接置いてありますと、その真下の床面の防水工事を行うことができません。
もし本格的に行う場合は一度室外機を移設しなければならず、費用も工期も桁違いになってしまいます。
床に直置きではなく、設備用の架台を設置して少し高い位置に設置。防水工事での必要箇所と縁を切っておくと非常に便利です。
新しいビルでは導入されているところもあります。羨ましいです。。
搬入導線と利用者導線を分離 | ビル | 設計 | 注意点
オフィスビルでも飲食ビルでも、日常の納品などが発生します。その際の
- 荷捌き駐車場
- 台車導線
- 搬入用エレベーター
これらは、通常の来館者の動線と完全に分離することが必要です。
分離しないと事故の原因になります。その主な事故の一例としては、
- 台車と来館者が接触してケガ
- 前が見えないくらい荷物を積んでエレベーター扉に接触、エレベーター停止
- 大量の班出入でエレベーターを長時間占有
これらはよくある話です。通常来館者の導線と搬入動線が共通だとトラブルの元になります。導線計画の際には必ず分けましょう!
清掃しやすい仕様 | ビル | 設計 | 注意点
ビルは管理の際、清掃業者さんと清掃の契約をすることが一般的です。
特殊な大理石や特注の仕上げで建築してしまうと、汚れが落ちにくかったり清掃業者さんによっては割増料金での契約になることもあります。
張り替えとなっても施工しやすい素材で仕上げるのがおすすめです。
産地に凝った天然大理石は絶対ダメだと思っています。
サインはデジタルサイネージ | ビル | 設計 | 注意点
オフィスビルなどにおいては、テナントの入れ替えのたびに社名の表示を変更する必要があります。ビルが大きいと、
- ビルのエントランスエレベータホール
- 各階の平面図
- 搬入用エレベーターの階表示
- 入居区画脇の表示
など、たった1社が入るだけでビルの中の何箇所にもサインの掲出が必要です。
サイン業者さんを手配して、その都度シルク印刷(もしくはカッティングシート)で施工すると費用もかかり、稀に作業をし忘れてしまう場所が発生することもあります。
初期費用はかかりますがデジタルサイネージを導入して、管内の表示を一括変更できるようにすると管理が楽です。
さらにタッチパネルにすると、外国人の方向けの案内にも対応可能です。
間仕切り、用途は自由に | ビル | 設計 | 注意点
今後、ビルの使い方については時代の流れとともに流動的になっていきます。
オフィスビルとして建築したビルに飲食店や展示場が入居したり、今後は想像もつかないようなビルの使い方をして行くこともあるでしょう。
そんな時に対応できるように、将来的に間仕切りの位置を変更しやすいように設計したり、法的に用途変更が可能にしておくことが理想です。
新型コロナウイルスの影響で、ここ半年足らずでオフィスについての考え方も一気に変わりました。今後は変化のスピードもどんどん早くなっていくと考えています。
設備改修しやすい配置 | ビル | 設計 | 注意点
エレベーターや空調機などの設備は改修工事が必要です。ビルが20年も経つと、物によっては丸ごと交換しないといけなくなることもあります。
その時に、今使用している機器よりも省スペースであったり、形そのものが変わっていることは多々あります。
設備の収まりを必要以上に凝った意匠にしてしまうと、工事の時に大変です。
小便器のセンサーやエレベーターの押しボタンをわざわざ大理石をくり抜いて収めたビルは、大規模改修工事の時に苦労します。。(経験済み)
スケルトン・インフィル | ビル | 設計 | 注意点
柱、床、天井などの建物の躯体と設備を分離しておくのは必須だと考えます。
今までの経験ですと、空調機の配管改修の時、メインの立て管が柱の中に入ってしまっており、どうしても作業ができないことがあったり、
給水管の更新の時も同様でやむなく別でもう一本、丸ごと新設して割高になったりと、改修工事のときに大きな差が出ます。
スケルトン(建物を支える構造駆体)とインフィル(住戸内の間取りや内装・設備)を分離した建築手法をスケルトン・インフィルと呼びます。耐久性が高いスケルトンに対し、ライフスタイルに合わせて間取りや内装を変更するなど柔軟性が高いインフィルと、はっきり分離することによって、容易に間取り・設備の変更やリフォームできるなどのメリットがあります。またスケルトン方式とは建物を支える構造駆体を分譲し、住戸内の間取りや内装・設備は購入者が自由に決められる方式のことです。
https://www.homes.co.jp/
終わりに | ビル | 設計 | 注意点
ビルは完成後、数十年にわたって使用していきます。
- 新築時に凝った造りにしたい!
- 他のビルと同じではつまらない!
- 少しでも安く建築したい!
など、ビルを新築するときには様々な思惑があると思います。ただ、その後数十年使用していくことを考えると、新築の時に将来のことをしっかりと考えて行くことで、長期的に健全なビル経営ができると思います。
ビルのLCC(ライフサイクルコスト・新築~運営~最後の解体までの総額)を考えると、新築時のコストより、その後の日常の費用の方が割合としては高いのです。
長期的な視点で設計に役立てば嬉しいです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました
今回、オフィスや飲食などの複合ビルを管理している経験からまとめました。日頃管理していると、設計から見直さなければいけない課題も多く見えてくるのです。