この記事を読んで欲しい人 | ビル | 電気 | 基礎
この記事は、
- ビル管理の会社に入ったけど電気はさっぱりわからない
- 電気の基礎を知りたい
- 何がわからないのかもわからない
このような方向けに書いています。
もくじ | ビル | 電気 | 基礎
- テナントなどの専有部での話
- 電灯と動力で異なること
- 親ブレーカーと子ブレーカーについて
- 子ブレーカーの合計が親ブレーカーの合計ではないこと
- ブレーカー容量を超えてもすぐには落ちないこと
- 漏電警報の有無も確認
- 電気室などからの配線
- ブレーカーだけではなく幹線でも流せる電気は異なること
- トランスからの取り出し
- よくある問い合わせ
- ブレーカーを増やしたい
- ブレーカーが落ちた
- まとめ
電気の設計、工事については専門の有資格者での作業が必要です。
詳しくは、電気主任技術者さんや、電気業者さんへご確認ください!
専有部での話 | ビル | 電気 | 基礎
電気はビル全体で使用しており、覚えるべき知識も膨大です。
まずは専有部内での配線やブレーカーなどを想定してまとめていきます。
初心者または経験の浅い方でも、流し読みできるようにまとめていきます!
電灯と動力で異なること | ビル | 電気 | 基礎
「電気」と一口に言っても、電灯と動力に分けられます。
電灯・・・通常のコンセントや照明など
動力・・・容量の大きな機器。(例えば空調機・厨房機器など)
一般的なオフィスビルの専有部には、「電灯」の分電盤は通常に設置されていますが、「動力」は設置されていないことが多いです。
親ブレーカーと子ブレーカーについて | ビル | 電気 | 基礎
分電盤の中には親ブレーカー(主幹)があり、そこから子ブレーカーが配線されています。
ただし、工事はもちろん、操作、点検は有資格者である必要があります。
分電盤を開けたりする時は注意が必要です。下手なところを触ると死ぬこともあります!
ブレーカーの容量について | ビル | 電気 | 基礎
ブレーカーには流せる電気の容量が決まっています。
メインである親ブレーカーから分岐して、それぞれの子ブレーカーに電気を送っています。
親ブレーカーが200A(アンペア)の下に20A(アンペア)の子ブレーカーが20個以上ついているのは大丈夫なの・・・?
確かに、最初は驚きますよね!でも大丈夫!
小さいブレーカーは、あくまでも配線保護のためについています。ブレーカーの容量ではなく負荷機器(接続されている機器)の電力の合計で考えます。
ブレーカーの容量を超えてもすぐには落ちない | ビル | 電気 | 基礎
例えば20Aのブレーカーに1.25倍(25A)の電流が流れた場合、60分以内にブレーカーがおちる必要があります。
また、同じく20Aのブレーカーに40Aの電流が流れた場合は、2分以内にブレーカーが落ちるように動作する必要があると規定されています。
ブレーカー容量以上の電流が流れても、すぐに落ちるわけではないので誤解しないようにしましょう。
漏電ブレーカーも確認 | ビル | 電気 | 基礎
20Aの子ブレーカーが落ちていたのであげておきました!
落ちた原因が大事です。そのブレーカーは漏電ブレーカーでした?
あ・・・(見ていませんでした)
ブレーカーは大きく分けて2種類がよく使われています。
- 一般的な過電流遮断器(MCB)
- 漏電遮断器(ELB)
どちらのブレーカーも過電流(電気の使いすぎ)で落ちることは同じですが、漏電者遮断器の方は漏電を感知して落ちます。
ブレーカーが落ちた時は、ブレーカーのつまみがONとOFFの中間の位置にあるのですぐにわかります。
復旧する場合は一度ブレーカーをOFFに押し込んでからONにしましょう
漏電ブレーカーの場合は、上記の作業に加えて近くにあるボタンが出っ張っているので、それを押し込むことで復旧できます。
ただ、過電流や漏電の場合はその原因を特定してからブレーカーを復旧しましょう。事故の元になります。
電気室などからの配線(共用部) | ビル | 電気 | 基礎
ここまではテナント内の専有部を主にまとめてきましたが、同じくらい共用部(電気室から各専有部まで)の配線などについても気をつける点があります。
ここからは共用部で注意すべき点をまとめます。
幹線にも流せる電流量が決まっている事 | ビル | 電気 | 基礎
ブレーカーと同じように、幹線にも流せる電気の量は決まっています。
公称断面積 | CV–1C | CV–2C | CV–3C | CVD | CVT |
m㎡ | A(アンペア) | A(アンペア) | A(アンペア) | A(アンペア) | A(アンペア) |
60 | 255 | 225 | 190 | 225 | 210 |
100 | 355 | 310 | 260 | 310 | 290 |
150 | 455 | 400 | 340 | 400 | 380 |
200 | 545 | 485 | 410 | 490 | 465 |
上記の表は、電線の断面積毎の流せる電流の表です。
ただ、空気中を配線されている前提です。配管の中に配線した場合は流せる電流量は減るので、注意が必要です。
詳しいことは電気業者さんや、ビルの電気主任技術者さんに確認する必要がありますが、知識としてそんなこともあるんだなーと認識しておくと業務に役立ちます。
トランスからの取り出し | ビル | 電気 | 基礎
一定規模以上のビルでは電気室があります。電力会社から引き込んだ高圧の電気をトランス(=変圧器)により電圧を下げ、ビル内の各所へ送電しています。
トランスも、容量に応じて電流の量が決まっています。
また電灯と動力でも異なりますので注意が必要です。一覧表を下にまとめておきます。
電灯トランスにおけるトランス容量&負荷容量
KVA | A |
10 | 47.6 |
20 | 95.2 |
25 | 119 |
30 | 143 |
50 | 238 |
75 | 357 |
100 | 478 |
125 | 595 |
150 | 714 |
200 | 952 |
上記の表から、例えば150KVAの電灯トランスから、714Aの電灯を取り出すことが可能。ということがわかります。
覚え方は、KVAを1000VAに換算して、電圧である210Vで割るとおおよそわかります。
150KVA = 150000VA 150000VA ÷ 210V = 714A
動力トランスにおけるトランス容量&負荷容量
KVA | A |
30 | 82.6 |
50 | 137 |
75 | 206 |
100 | 275 |
150 | 413 |
200 | 550 |
300 | 825 |
500 | 1375 |
こちらの覚え方は、KVAを1000VAに換算して、電圧である210Vで割る。
さらに√3 (=1.7320508)で割ります。
200KVA = 200000KVA
200000VA ÷ 210V ÷ 1.7320508 = 549.857A
よくある問い合わせ | ビル | 電気 | 基礎
ここからは、実務でよくあるテナントさんなどからの問い合わせを対応策をまとめていきます。
ブレーカーを増やしたい | ビル | 電気 | 基礎
例えばビルに入居されているテナントさんから「ブレーカーを増やしたいんだけど・・・」
という問い合わせを受けたとして、詳細を確認する必要があります。具体的に言うと
- テナント分電盤の中の子ブレーカーを増やしたい
- そもそも分電盤を増やしたい(増設)
上記のどちらかであるかを区別します。
❶であった場合、分電盤全体の電気の使用量を確認した上で、子ブレーカーを増やします。
注意する点としては、
- 親(メイン)ブレーカーに流れている電力量に余裕があること
- 分電盤内にスペースがあり、設置可能なこと(場合によっては盤の改造が必要)
- 親ブレーカーを遮断して実施する必要があるので部分停電になること
上記について確認した上で作業になります。分電盤の内部の作業であれば特に業者の指定はなく、テナント側で電機業者さんを手配して実施してもらうことが多いです。(C工事)
B工事C工事の区分はビルによって異なりますので、それぞれのビルに確認が必要です。
一方、❷であった場合は少し厄介です。
- ビル側のトランスに空きがあること
- 幹線の配線ルートがあること
- ビル側からの了解が得られること
これらの条件を満たした上で、ビル側の指定業者(B工事業者)に依頼することが多いと思います。
トランスから電源を取り出すためには停電が必要です。(該当するトランスから宮殿されている先が全て停電)
他のテナントさんに影響の出る場合もあるので、すぐには手配できないこともあります。
「特殊な機械を導入するので動力電源が必要になリまして」
「業務拡大で電源が足りなくなりまして」
オフィスビルでも、上記の理由でテナントから要望が上がってきたことがあります。
ブレーカーが落ちた | ビル | 電気 | 基礎
テナントさんから、ブレーカーが落ちたと連絡を受けることもよくあります。
落ちているブレーカーはレバーがONとOFFの中間にあるので、その回路内で漏電している機器がないかを調査します。
子ブレーカーが落ちているのであれば調査する範囲はあまり広くないので比較的容易ですが、親ブレーカー毎落ちていると少し厄介です。
よくある事例としては、
- 親ブレーカーが漏電遮断器
- 子ブレーカーは漏電遮断器ではない
- 親ブレーカーが漏電を検知して遮断
- 子ブレーカーは全てONのまま
この条件で親ブレーカーが落ちていることがあります。
その場合、簡単な調査の方法があります。
- 親ブレーカー、子ブレーカー共に全てブレーカーをOFF
- 親ブレーカーのみ先にON
- 子ブレーカーを一つずつ上げていく
- どこかで親ブレーカーが落ちるので、その時に上げた子ブレーカーの回路の機器のどれかが漏電している
この方法で、漏電している回路を特定することができます。
いろいろ調べて、テナントさんにもヒアリングをした結果
「本日から使い始めた中古のOAタップがありまして・・・」
と言われたこともあります。
- 最近新しい機器を入れていないか。
- 電気の使用量が増えていないか。
などをテナントへきちんと聞くことも原因究明の手がかりになります。
まとめ | ビル | 電気 | 基礎
私はビル管理の仕事をするまで全く電気についての知識がありませんでした。
ビル管理の仕事で直接電気工事を実施することはありませんが、お客さんと話をするときや、業者さんとやりとりする時に最低限の知識としては押さえておくべきところを簡単にまとめました。
ただ、電気は時として命に関わりますし、危険なものという事を忘れずに扱いましょう。
電気業者さんや、主任技術者さんと仲良くなりいろいろ教えてもらう事が大切です。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
ビルによっても異なります。詳しくは電気業者さんなどにお問い合わせください。
私も学生時代は文系で、ビル管理会社に入るまでは電気についてはさっぱりわかりませんでした。実務で必要な最低限の知識としてお読みください!