この記事を読んで欲しい人 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
この記事を読むことで、
- ビルの賃貸借契約を定借にするべき理由
- 定期借家契約にするメリット
がわかります!
もくじ | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
この記事では普通借との違いや、実務においての問題点にも触れますが定借にすべき理由をまとめます。
全てのビルオーナーに読んで欲しいと思っています。
そもそも普通借契約との違いとは | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
普通借契約と定期建物賃貸借契約の主な違いは下記のとおりです。
普通借家契約 | 定期借家契約 | |
契約方法 | 口頭でも書面でも可 | 書面での締結が必要(公正証書等) 更新がなく、期間終了により終了することを ①あらかじめ ②書面を交付して 説明する必要がある。(説明しなかった場合無効) |
賃貸借期間 | 1年以上 (1年未満は期間の定めのないものとみなされる) | 1年未満でも可 |
契約の更新 | 賃貸人が拒否しても、正当事由がないと契約は更新 | 更新はなく期間満了により終了。 (再契約は可) |
賃料の減額請求権 | 特約でも無効 | 特約により減額しない合意も有効 |
定期借家契約の大きな特徴は、
- 減額不可の特約が有効である事
- 自動更新がなく、期間の満了とともに契約が終了する事(再契約は可能)
ちなみに、定期借家契約の制度自体は平成12年に開始しました。
普通借家契約と比較して手続きなどは面倒ですが、健全なビル経営においては定借は必須だと思います。
定借にする理由 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
それでは、なぜ私が定借をこれだけお勧めするのか、その理由をこれからまとめていきたいと思います!
建替時の立ち退きのため | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
どんなに頑丈なビルでも、時間と共に劣化します。いずれ建て替えが必要です。
ビルを建て替えるときには全てのテナントに一度退去してもらう必要がありますが、この交渉がなかなか上手くいきません。
普通借家契約だと、正当事由がないと貸主(=ビル側)から解約はできませんが、単なる建て替えでは正当事由に当たらないことが多いです。
貸主から解約できないがために、立ち退き交渉が難航し、たった一つのテナントだけ残って数年経っている大きなビルをたまに見かけますが、悲惨です。
え?「建替えするので退去して!新築したらまた入ってもらうから!」
といえばみんな協力してくれないの?
残念ながらそんな甘いものではありません。
特に店舗の場合は
- オープンの時に多大な内装費もかけている(回収していかなければならない)
- 一時でも閉店するとお客さんが離れる
とさまざまな問題があります。
また、よく路面店に入っているとある喫茶店などは、わざと古いビルに入居して、立ち退き費用でかなり儲かっているのは有名な話です。
その点、定期借家契約(にすることでスムーズにテナントとの契約を終了させることができるため、計画的な建て替えには非常に有効です。
残念ですが、莫大な立ち退き料を請求されることもあります。(ゴネ得な部分も…)
ある程度築年数の経過したビルでは定借は必須です!
飲食は定期的な入れ替えを | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
ビルの中に飲食店が入っているケースもよくあります。
オフィスで働く人や、周辺の施設を利用した人をターゲットにした飲食店ですが、ずーっと同じ店だと飽きてしまいますし、それはビルの印象にも直結します。
ショッピングモールなどはその最たる例で、どんどん入れ替えていかないとお客さんが飽きてしまい、施設全体の来館者数、売り上げも下がっていきます。
定期的に新しいお店と入れ替えることで新鮮味を維持しましょう。
オフィスと併設の場合、定期的に入れ替えをじっしすることでオフィスで働いている方々の満足度にもつながります。
問題のあるテナントを追い出せる | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
現行の民法では弱者保護が原則です。賃貸借契約においては特に顕著に見られます。
仮に迷惑行為をするテナントがあっても、よっぽどのことがない限りはビル側から追い出すことはできません。
たった1社、問題のあるテナントを入れてしまったがために他のテナントが退去したり、ビル全体のイメージが悪くなったりすることもあります。
短期的には家賃収入が減少することもありますが、そう言ったリスクを排除していくことはビル経営において非常に大切です!
家賃交渉時にも有利 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
普通借家契約では基本的には契約は自動更新です。
長年入居しているテナントで、契約当時の非常に安い賃料単価が継続していて相場と差がある。というケースもたまに見ます。
定借であれば定期的に契約終了、再契約となります。安い賃料のままでズルズルといくことはほとんどありません。
ただ、反対に高い賃料のままで契約してもらっているケースもあります。そこは一長一短かと思います。
また、減額不可の特約をつけられることも大きなメリットだと思います。
定借のメリットはよくわかりました!
たしかに、長い目で見たら定借の方がいいのかも!
でも、実情はなかなか浸透していないのです国交省のデータによると。定借は全体の10%程度。。
実務での問題点 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
いまいち浸透しない理由は次の2つが大きいと考えられます。
もちろんこれ以外にもありますが、今回は特に大きな2つの理由にフォーカスしてまとめます。
入居者側が敬遠する | 問題点 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
新しくオフィスや店舗を探す時、定借だと入居者さんからの抵抗が強くあります。
例えば定借7年契約でお願いします!と言うと、7年後には追い出される?と心配されることがあります。逆の立場であれば当然の心配だと思います。
テナント側からすると、せっかく内装や引っ越し代にお金をかけたのに数年で追い出されたら困る!という考えにもなると思います。
法人の場合は途中で担当者が変わったりすることも良くあるので、契約の段階で文章に残しておくことが必要です。
例えば、定借の満了時の再契約の条件を明示しておく事です。条件の一例としては
- 期間中賃料などの支払いの遅れがないこと
- ビル内、近隣を含む周辺への迷惑行為がないこと
- ビルのルールをきちんと守ること
これらの条件で判断し、問題がなければもちろん再契約できます!とお伝えしておくことなどが必要です。
契約期間中のテナント側との情報交換などは、余計に密にしておく必要があると思います。
家賃が安くなりがち | 問題点 | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
普通借と比べて定借の方が家賃は安くなります。
会社は一年ごとの決算で収支を立てます。目先の家賃を少しでも高くしたいという考え方が強いですね。
会社によっては、役員が短いスパンで交代していきます。自分の任期中に結果を出したいと思う人が多いのはやむなしです。
本来であれば、自分の任期関係なく将来の建て替えを見越して、「定借で契約していきます!」というべきだと思います…。
終わりに | ビルの賃貸借 | 定借にすべき理由
今回は、定借にするべき理由についてまとめました!
制度が始まって20年以上経ちますが、まだまだ浸透していない定期建物賃貸借契約。
ただ、今後ビルの建て替えも増えてくると、立退交渉などが問題になってくるのかなぁとも思います。
あくまでも個人の考えではありますが、参考になれば嬉しいです。
職場でも声を大にして言っていますがなかなか広まりません。私も引き続きがんばります!
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
私は10年以上ビル経営に携わっていますが、オフィスビルや商業ビルは絶対に定期借家契約で締結すべきだと考えています。その理由をまとめます!