この記事を読んで欲しい人 | 耐震診断 | 体験談
この記事は、
- 管理しているビルが旧耐震で空室が増えてきた。
- 耐震補強すれば旧耐震でも貸せる?
- 耐震診断の流れを知りたい!
上記の方に向けて書いています。
もくじ | 耐震診断 | 体験談
東京都内で旧耐震、RC造の9階建程度の飲食ビルを管理していた時の体験談をまとめます。
ちなみに、床面積は10,000㎡程度でした。
当時2010年代中盤の実体験です。
自治体によって異なりますし、ビルの仕様などにも左右されます。参考程度にお読みください!
耐震診断に至るきっかけ | 耐震診断 | 体験談
私はビルのオーナー会社の管理担当者として、ビルに空室が出た際に飲食店や、物販などのテナントを募集していました。しかし、なかなか決まらずに空室が増えてきました。
空室の原因について仲介業者とのヒアリングを何件か行いましたが、来店するお客さんの安全や働く従業員の安全を考えて、旧耐震ではなく新耐震基準のビルを希望するテナントが増えているとのことでした。
ただしビル側としては、
- 多額の費用がかかる
- 解体から新築まで恐ろしいほどの期間がかかる
上記の理由などから、いきなり耐震補強や建替をすることはできません。
そこで、まずは現状を知るため耐震診断をすることになりました。
当時は東日本大震災や各地での災害を経験し、さまざまなところで防災についての意識が高まっているのを感じました
耐震診断の実施 | 耐震診断 | 体験談
ネットで「耐震診断」と検索すると色々な業者が出てきますが、当時は役員の推薦で取引実績のあるスーパーゼネコンに依頼することになりました。
後述しますが、金額は張りました。しかし業者の経験値とその後の耐震補強の相談と考えると致し方ない部分もあると思います。
特に業者さんとの付き合いがなければビルを新築した時の建設会社に相談するのもいいと思います。
内容と費用 | 耐震診断の実施 | 耐震診断 | 体験談
耐震診断の内容は大きく分けて
- 図面等の資料での確認
- 現地調査
この2つの流れで実施します。
①の資料の確認は
主に設計図書や、竣工図書などを確認します。
必要な資料を業者さんに預けるだけで、特にビル側で必要な手続きはありません。
もちろん、増築や改築の履歴があればそう言った図面も確認の対象です。
設計図書があるかないかで調査の手間が少し異なります。
普段あまり使用しない種類の資料ですが、この機に所在を確認しておくのもおすすめです!
現地確認 | 耐震診断の実施 | 耐震診断 | 体験談
現地確認の際は、建物内の各階を見て周り建物の状況を調査します。内容としては、
- 目視による確認(ひび割れ、地盤沈下の有無など)
- 一部破壊検査(コンクリートコア抜きによる圧縮強度や中性化の深さを測定)
- 図面との相違がないか確認
上記について中心に調査します。
6〜7名程度で来館して、数日かかった記憶があリます。
特にコア抜きなどの一部破壊検査の時は騒音が出るので注意しましょう。
テナントさんが入っている場合は破壊検査の場所と日時について先に案内しておくことが必要です。営業中のテナントさんに迷惑のかからないようにしましょう。
費用は高額 | 耐震診断の実施 | 耐震診断 | 体験談
10,000㎡超のビルでしたが、耐震診断の費用は1000万円を軽々と超えていました。
診断だけでこの値段かと驚いたことを覚えています。
もちろん委託する業者によって違います。また、建物側に必要な図面がどの程度常備されているかどうかによって異なります。あくまでも参考までに取り扱いください!
助成金は使えるの? | 耐震診断の実施 | 耐震診断 | 体験談
条件を満たすことにより、自治体などから助成金を受けることが可能です。
対象のビルが該当するのか、自治体のHPなどで確認しましょう。
特に緊急輸送道路と呼ばれる、大通り沿いの建物は地震で倒壊してしまうとメインの大通りを塞いでしまい、災害時の応急活動に支障をきたすため、助成金が比較的手厚くなっています。ただし、
- 特定緊急輸送道路
- 緊急輸送道路
上記の二つでは助成金の扱いが異なる場合があります。非常に似ていて、読み違えやすいですが注意してください!
緊急輸送道路とは・・・災害直後から、避難・救助をはじめ、物資供給等の応急活動のために、緊急車両の通行を確保すべき重要な路線で、高速自動車国道や一般国道及びこれらを連絡する幹線的な道路。
国土交通省ウェブサイト https://www.mlit.go.jp/
当時、緊急輸送道路に面していたため、耐震診断の助成金の上限である200万を申請しようとしました。
ただ、申請するために都の認定期間による「評定」の手続きが必要で、その手続きに200万が必要でした。。(結局助成金は申請しませんでした)
結果は? | 耐震診断の検討 | 耐震診断 | 体験談
当然ですが、
「旧耐震基準で作られているビルなので、新耐震基準の基準は満たしていません。」
という結果が出ました。
私はそりゃそうだろと思いましたが、役員などは「新耐震相当の強度です!」
という結果を期待していたようで、落胆が凄かったです。
耐震補強の検討 | 耐震診断 | 体験談
上記の結果を踏まえて、今後のために耐震補強を検討しました。
RC造(鉄筋コンクリート造)のビルの主な耐震補強の方法としては、
- 壁の増設
- 柱の補強
- 鉄骨ブレースによる保強
などがあるとのことでした。
ただし、上記の工事を実施するためには大変な制約が伴います。
- テナントが入居している箇所は内装を一度壊して施工する必要がある
- 作業に大変や音と工期が必要
- 柱を補強、太くした分、テナントに賃貸可能な面積が減る(賃料減少)
上記のことから、断念しました。
もちろん、工事の金額も桁違いにかかります。
また、耐震補強をしたところでビルの中の設備の寿命は変わりません。
築年数も経っており、他の設備の寿命なども検討した結果、将来的な立替の方が現実的だという結論になりました。
当時の実績 | 耐震補強の検討 | 耐震診断 | 体験談
上記の理由などから、当時は耐震補強の実施は見送ることとなりました。
参考のため、スーパーゼネコンの担当者に聞いてみたのですが、
- 学校や、路面店の銀行などは実施しているところは多い。
- マンションなども実績はある。
とのことでした。
一方、都内のビルは建っている敷地に余裕がないこともあり、稼働中のテナントビルでは耐震補強工事の実績はほぼ無いとのことでした。(当時の話なので、今は多少の実績はあると思います!)
小学校などは柱周りにブレースが入っているのをよく見かけますね。
やはりテナントビルは稼働中の店舗への影響が大きいので厳しいと思います・・・
ただし、旧耐震のビルということは築年数がかなり経過しています、
躯体の劣化だけではなく、
- エレベーターなどの電気設備
- 給水管・排水管
- 電気室など
こういった設備も古くなっています。耐震補強をしたところで、旧耐震ですが耐震補強済み!というビルと、新築で丸ごと新耐震基準のビルとでどちらがテナントさんに魅力的に映るかは考えなければいけないと思います。
終わりに | 耐震診断 | 体験談
1981年以前の旧耐震のビルは、一部耐震診断などが義務化されています。
費用もかかりますが、当時に今後の「解体・建て替え」なども検討していかないといけない年数になってきています。
費用も、工期もかかりますので耳が痛いと思いますが、ビルの利用者、来館者の安全が一番です。
長期的な計画を立案する上で耐震診断は必要だと思います。
最後までお読み意いただきまして、ありがとうございました!
私は自社ビルの管理担当として、都内23区内の旧耐震ビルを管理していました。
その際の耐震診断実施から耐震補強検討までの体験をまとめました。